5.水際の夜
深夜の倉庫街は、人の気配どころか猫の子一匹すら見当たらないほど静まり返っている。 『荷が日本へ到着するまで、もう時間がない』と言われれば、...
るろうに剣心、フルメタル・パニック!、ガンダムSEEDなどの同人小説・漫画保管庫です。
深夜の倉庫街は、人の気配どころか猫の子一匹すら見当たらないほど静まり返っている。 『荷が日本へ到着するまで、もう時間がない』と言われれば、...
「……久しぶりね」 ようやく呼吸が整うと、薫は縁に話しかけた。肩で呼吸をしていた薫とは対照的に、縁は汗ひとつかいてはいなかった。倉庫の中で...
「お預かりしていたものは以上です。間違いはありませんか?」 「はい」 「では、ここに引き取りの署名を」 「はい。すみません、すっかり引...
薫が目覚めたとき、すでに陽はずいぶん高くなっていた。見知らぬ壁と天井が織り成す逆さまの世界に、薫はしばらくここがどこなのか分からなかった。転...
「それじゃ、またね! また京都にきてね、薫さん! ぜったいだよ!?」 「もちろん! 操ちゃんも、いろいろとありがとう」 「カカカ! 嬢ち...
春早い墓は、秋に訪れたときとは違って、穏やかな静けさに満ちていた。それが、もう声も聞こえず姿も見えない亡き前妻を思い出させて、剣心は静かな気...
「弥彦、もうすこし右へ」 「おう。よっこらせ……っと」 どすん、と音を立てて畳を降ろす。浮き上がっている畳のへりを足で馴らすと、弥彦は満...
「薫、お前さ、髪切った?」 「え? 切ってないわよ?」 弥彦の言葉を聞いて、確かめるように薫が髪に手を当てる。当然ながら、長さも量も、昨...
習慣とはよくいったもので、何も考えずに歩いていると、縁のある場所へ勝手に足が向く。買い物通りを通って河原を抜けると、剣心は大通りに面した警察...
「あのな、お嬢さん。ここは、アンタみたいな娘さんがお百度踏んでいいところじゃねえんだよ」 顎をしゃくるような動作で、男が薫に凄んでかかる。...