鉄壁のブラザー・シップ(6)

呼び出された宗介とアルは、言葉にできない居心地の悪さを感じていた。原因のひとつは、目の前の二人―――ブルーザーとノーラ―――の妙に親密で連係のとれた追求だ。
そしてふたつめは、どうやらその二人にからかわれているらしいこの状況にあった。
「この二つのグラフを見てちょうだい。きれいに重なっているでしょう? まるでコピー・アンド・ペーストしたみたい。これ、なんだと思う?」
『軍曹殿と私の神経反応と交感反応の波形です。レミング中尉殿』
「ご名答。ちなみにこっちが2週間前、ハラレ内戦で戦闘した時の波形。このシンクロ率の差、劇的な進化だと思わない?」
「肯定です」
「では、ここで問題だ。この感動的なまでの進化は、何が原因だったか分かるか?」
『軍曹殿と私の志向性と目的意識が完璧に一致したためだと考察します。サックス中尉殿』
「アル、『中尉殿』はやめてくれ。次言ったら電源をひっこぬくぞ」
『了解しました。ミスタ・サックス』
「……相変わらずかたっくるしい……。まあ、いいだろう。それで、だ。その『志向性と目的意識』ってヤツ。これが問題だ。完全に重なった理由、それも考察できるか? アル?」
『肯定です。おそらく、原因はミズ・チドリにあると考察します』
「ブラボー! ご明察だ。お前さんたちの『チドリ・カナメを守りたい』って思いが、バカみたいな力を生んだってわけだ。普段はちとウマがあわねぇみたいだが、心が一つになりゃ、こうまで息があうってこった。いやはや、パワー・オブ・ラブ、アーンド、フレンドシップってやつだな! わっはっは!」
「あら、ブルーザー。サガラ軍曹とアルの場合、フレンド・シップって言うよりはブラザー・シップじゃない?」
「どっちにしても戦友だ! これから戦闘中は、二人ともカナメを思い浮かべながら戦ってくれ! そうすりゃ、俺ら整備班は大助かりだ! はっはっは!」
豪快に笑うブルーザーを、『あんまりからかっちゃダメよ』とノーラがたしなめた。そのわりに、顔はしっかり笑っていて、気安くブルーザーを叩いたりしている。
居心地悪そうにしている宗介とアルに気づくと、満足したように真面目な声色に戻った。
「ま、冗談はこれくらいにして。本題はアル、あなたよ。提出してもらった先ほどの戦闘データだけど……ところどころ、ブラック・アウトしているのよね。なぜかしら?」
『推測不能です』
「ふぅん? カナメの実験データにかかってたジャミングと『まったく同じ方式と波形で』データ・ロスしているんだけど、それでも心当たりがないのね?」
『……肯定です』
伺うような沈黙。
アルの状態を示すLEDランプがチカチカとせわしなく点滅する。
「中尉、そのくらいにしといてやれよ。男にゃ、知られたくない秘密のひとつふたつあるもんだ」
「あら、ブルーザーにもあるの?」
「いや……俺は……だな……」
(さっきからなんなのだ。この疎外感は?)
仲の悪かった二人が、仲良くしているのはよいことだ。まして、いがみ合いがちな技術版と整備班の二人なのだから、なおさらだ。
よいことなのだが―――。
なんだろう、このそこはかとないヨソ者感は。
なんだか、今自分がここにいることさえ否定されているような気がする。
「ま、ブルーザーに免じて、今日はいいでしょ。ただし、これからの結果いかんでは、情報解析が必要になるかもしれないから、そのつもりでね」
『……了解しました』

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